原料処理(洗米・浸漬)工程

秋、国内各地の契約栽培農家や米屋から厳選された酒米が精米され英君に届きます。
そして酒造りのシーズンが始まります。

昔からよい酒を造るためには、「一麹、二酛(もと)、三醪(造り)」と言われています。
それには、米粒に付着している糠を洗い流す事と、米粒が吸い込む水分量、つまり原料処理が大きなポイントとなります。

英君では5kgに小分けしたお米を、2つの異なる洗米機を併用し毎分300Lの水を使用し糠を流し、そして厳密に吸水量をコントロールしながら、目標とする酒質に合わせる原料処理を行っています。

一見機械に蔵人が使われている様にも見えますが、気温・水温・白米水分・浸漬率など重要なところは蔵人の知識と経験が必要とされます。

蒸・仕込み工程

蔵の朝は早いです。朝6時に始まり、釜にボイラーの蒸気を入れ、前日に洗米したお米を甑(大きなセイロ)に張ります。すこしでも捌(さばけ)のよい蒸米を獲る為に、抜け掛けと呼ばれる方法で米を張り込みます。
熱い蒸気の出る甑の中に5kgずつ手作業で米を張り込む作業は、火傷の危険もあり蔵人に緊張が走ります。

昔から蒸米は外硬内軟(がいこうないなん)がよいとされます。
それには、100℃より高い乾燥した蒸気で蒸す事がポイントになります。

英君の釜場(米を蒸す所)は、1Fの釜で蒸気を作り、2Fの甑で米を蒸します。
通常は釜の上に甑が載るので熱い蒸気で蒸せますが、距離が長く蒸気が冷えるため、特別なヒーターで再加熱し、バルブ調整で圧力を高め強い乾燥蒸気で蒸します。

約1時間蒸された米は、工程ごとに放冷機(お米を冷ます機械)や蔵人の肩に担がれてそれぞれの部署に運ばれて仕込まれていきます。

製麹工程

朝8時、蒸米が仕上がります。一番上にあるのが麹になるお米です。
酒造りの中で麹が一番大切だからです。

麹になる米は蔵人の肩に担がれ、麹室の床と言われる大きな台に運ばれ広げられます。
38℃以上の室温の中、目標の品温と水分量になったら麹菌が振られ、一山に積まれ布やネルや毛布に包まれ、麹米の製麹が始まります。

翌日の朝、品温を上げた麹米をほぐし、隣部屋のタライに10kgずつ盛られます。
英君では以前は木箱で製麹していたが、タライは角なく丸く、気密性もよく、盛られた麹は品温の偏りが少なくなるので、現在はタライ製麹を採用しています。

約12時間後、麹米は別のつきハゼ君ロボット製麹機の部屋に移動します。
夜間作業撤廃の為に導入されたロボットですが、思い通りの品質の高い麹を製麹することが難しく、現在はステンレス製の箱だけを使用し蔵人の手造りで製麹しています。
室温と品温を上げ湿度を落とし、乾かして麹菌を米の内部まで成長させ、翌日昼ごろ出麹します。食べたら上品な甘みが残る麹が目標です。

54時間以上と長時間の製麹となりますが、すべての麹が私たちの理想とする酒を造るために、日夜蔵人の手により製麹されていきます。

また、麹の力価を自社で分析しデーターを活用し、勘だけを頼りにしない製麹を目指し日々進化するように努めています。

酒母(酛)工程

水・米(蒸米)・麹に酵母を添加してまずは少量の酒母を仕込み酵母を増殖させます。
醪(もろみ)の経過は酒母の経過に似ると言われるほど、酒の母と字の如く大切な工程です。

英君では全て静岡県内で開発育成された静岡酵母を使用します。
静岡酵母で醸した酒は「静岡型吟醸」と呼ばれ、「フレッシュで飲みあきしない酒」「フルーティな香りで、雑味のない綺麗な酒」「優しい味と香りで、食中酒として最適」といった評価をいただいています。

静岡型吟醸を目指すために普通速醸酒母という技法で酒母を仕込みます。
まずは18℃を目標に、タンクに水・米(蒸米)・麹に酵母を添加し仕込みます。
そして一旦10℃以下まで冷却し、それから数日間ダキ樽と呼ばれるステンレス製の筒の容器にお湯を入れてタンクに沈め、昇温させ糖化と発酵を促します。
20kg以上の熱い容器を入れ、でんぷん質の糖化のスピードと酵母の増殖のスピードのバランスを見極めるこの作業は、体力と高い技術と経験が求められます。
酵母が最大数になった所を経験と分析と顕微鏡観察などで見極め、品温を落とし数日寝かせ弱い酵母を淘汰します。

酒母は、醪タンクの仕込みに使われて、アルコール発酵を進めると同時に、酒の味にも左右されるので、粘り強く活動するような酵母に育てなくてはならないのです。

醪の仕込み工程

水・米(蒸米)・麹・酒母が揃い、いよいよ醪の仕込みが始まります。
醪とは、酒母を土台として麹、蒸米を水に仕込み、純粋に酵母を増殖させ、アルコール発酵をさせるものです。

醪は健全な発酵と野生酵母や雑菌の繁殖を防ぐために、4日間で3回に分けて仕込みます。
英君の水は硬度5.6と硬度が少し高く、ミネラルにより酵母が増殖しやすいので、高品質なお酒を目指すために低めに丁寧にゆっくり仕込みます。

もろみは日々蔵人が、ツラを見て、香りを嗅いで、状貌を確認します。また、毎日の成分分析を併用することで、より正確な判断を下し、的確な品温調整や追い水をします。
そして最終的に上槽するタイミングを判断します。

分析データーは蓄積し、今後の更なる美酒を醸すために生かしています。

上槽・火入れ工程

醪が発酵を完了した段階で、酒粕と酒を分離する工程を上槽と言います。
長年の経験と鋭敏な勘と分析値で判断し上槽のタイミングを決めます。

英君の上槽は10℃以下の冷蔵庫の中に置かれた自動圧搾機で行われます。
日本酒には多くの有機物が含まれており、常温で機械を使用すると、雑菌やカビに汚染されるために平成27年より低温管理された中で作業を行っております。
おかげさまで雑味の少ない綺麗なお酒が上槽されています。

また、大吟醸などの袋吊りもこの部屋で行い、鑑評会などで高い評価を受けるようになりました。

上槽されたお酒は、目的別に濾過や火入れされてビン詰めされます。

英君酒造では上槽後2週間以内のビン詰めを徹底しております。
常にフレッシュな状態のお酒をビンに詰めて、製品として10℃以下の冷蔵庫に保管しています。

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